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:そして・・・彼らは知ることになる。
○毎日同じ夢を見る。それにどんな意味があるというのか・・・。
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磯部洋平は最近おかしな夢を見るようになった。
自分と同じような年頃の少年達と毎日毎日夢の中で会っているのだ。 そうして三人は、あれやこれやと試すうちに、どうにか自分たちが「同じ夢」を見ているまったく別の人間であることを確認する。 それだけならまだしも、その夢は今から25年も前の自分たちが知らないはずの時代であった。 ぶっきらぼうで少し気の短い明石浩一。おっとりしていて、どこか抜けている柳周。そして、馬鹿でおっちょこちょいな洋平。 三人は、その夢の中でまたまたおかしな人と出会うことになる。 その青年は、彼らの話を聞いて失笑していまうが、三人の真剣な口ぶりを察して助けになってくれると言い出した。 |
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○運命的な出会い・・・本当にそうだろうか?
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さて、夢からさめた洋平さん。暇を持て余していた所へ一本の電話がかかってくる。
今は離れて暮らしている父親の龍二からだった。 目が見えないというハンデを抱えて、日々の仕事にも困るような生活を送っている父。 洋平はそんな父を心配して話題を変えようとするが、話がずれて毎日見る夢の話になってしまった。 それを聞いた龍二は自分目が見えなくなったのも25年前なのだと洋平に告げる。 ここから、夢と現実が奇妙な符合を見せ始める。 劇団にいた父、25年前に目を傷つけ、その事を今でも悔やむ続ける父。 そして、夢の中で現れた青年の名も父と同じ龍二だった・・・・。 |
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○どっから見ても変人にしか見えない。この人の話、本当に信用していいのか?
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少しばかりおかしな青年龍二が三人に紹介したのは、龍二が所属する劇団の脚本を書いている伊村という男だった。
洋平は、伊村に事のあらましを話し助言を求める。 その話に興味を持った伊村は三人の話を詳しく聞き、様々な事を確認していき、ついにある仮説を提案する。 その仮説とは、洋平、浩一、周の三人が、生まれてくるはずだった可能性なのではないかという物だった。 別々の世界に存在した兄弟とも呼べる存在が、なんらかの拍子に夢の中で出会ったのだという。 しかし、事態はそれだけでは済まなかった。 父と龍二と名乗る青年が同一人物なのではないかと言い出したことで事態は思わぬ方向へと進むことになる。 目を傷つけた原因が大道具の鏡であることをしり、そしてそれを伊村や龍二はこの次の公演でそれを使うというのだ。 父が目を傷つけた25年前の、その瞬間。 それが確実に近づいてると三人が気付くまでにそれほど時間はかからなかった。 |
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○死ぬんじゃない・・・・・消えるんだよ。
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いつからだろう、こんなおかしな夢を見るようになったのは。
目が見えなくなったあの日を今でも覚えている。 もういちど、あの日に戻れて、目が見えるままでいられたら。 おれは、子供の顔を見てみたい。 今まで、一度だってその顔を見たことがないのだから。 一度くらいそれが許されても良いはずなのに。 だから、それが叶えられるなら・・・・・俺は、どんなことでもしてやろう。 たとえ、それがどんな結果になろうと。 |
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○なに、またどっかで会えるさ。 その約束を守るために僕たちは・・・・。
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その日が少しずつ近づいてくる。
そして、この夢を見させているのが父龍二であることに気付いた三人。 自分たちは父が見ている夢の中にとらわれているのだと知り、未来が変わらなければこのまま夢にとらわれたままなのだと理解した。 ならば、するべき事はたった一つ。 鏡をこの手で壊すほかない。 しかし、本当にそれだけで済むのだろうか? この鏡を壊すことで確実に今とは違う未来がやってくる。 その時、自分たちは生まれてくることが出来るのだろうか? 自分たちは、可能性でしかないのだから、自分たちとは別の可能性が無いとは言い切れないのだから。 その事が決断を鈍らせ、なにも出来ぬまま龍二は目を負傷してしまう。 しかし、夢は非情にも「その日」へと三人を連れ戻してしまうのだった。 未来を変えなければ、自分たちが生まれてくるよりも先に消えて無くなってしまう。 ならば、自分が生まれてくるはずの未来に賭けるより他に道は残されていない。 また、どこかで会えるはず。三人はそう約束を交わし、お互いの意思を確認する。 そして、洋平は鏡をその拳で叩き割った。 その先に、どんな未来が待っているのかも知らず。 だた、自分達が幸せになる事だけを信じて・・・・。 |
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